「またここへ来てしまった」 小さなボストンを抱えて俺はこの地をたった一人眺めていた。 これで3度目だ。失恋してここへ来るのは…… もう2度と来るまいと、来るたびに思ったのに。 ここは北アルプスの麓のスキー場。 すでに季節は初夏……俺のほかには誰もいない。 昔からこの場所へはよく来ていた。たくさんの懐かしい思い出が残されている。 そして今、心をいやすための思い出に浸りに来ている。 ……自分でも情けない男だと思う。 一度、二度、そして三度までも失恋し、そしてここへまた来た。 一度目、二度目まではしょうがないと思っていた。 でも、うまくいっていた「今度こそ!」の三度目は……悔やんでいる。 つまらないことで喧嘩してしまっていたのが原因だ。 それも自分が悪いことはわかっている。 これほど自分の強情でわがままな性格をうらんだことはなかった。 彼女はかわいくて、やさしくて……俺にはもったいないくらいの女性だった。 いつも俺のことをサポートし、立ててくれた。 ……しかしあれ以来会っていない。 その女性を失ったとき、今までに受けたことのない大きさのショックがあった。 自分でも信じられないくらいのショックだった。 それを忘れに、またこの地へ来たのだ。 しかしここへ来ても忘れることができないことに気づいた。 何故か悲しみがこみ上げてくる。 ふと誰かが前にいるような気がした。 なにげなく顔を上げる…… 半年間、毎日のように見ていた顔を見間違えるわけがない。 白い肌、黒く澄んだ瞳。 「恵美……」 と、思わず口に出る。 「雅之さん……雅之!」 彼女が前触れもなく抱きついてくる。 「どうしてここに来るってわかったんだ!」 喜びの声で俺は彼女に聞いた。 「だって……失恋したときはここに来るって。この思い出の地に……」 半分泣き声で彼女が答える。 そう、俺は彼女にだけここのことを話してあげた。 「思い出の地。そして俺の新たな希望への出発点だ」と。 俺は彼女をしっかりと抱き締めた。 この地はまたすばらしい思い出と希望を与えてくれたのだ。 そして二年後…… 俺たちはこの地の教会で結婚式を挙げた───── |
当時のものは省略させていただきます。あんまりにも意味が無いので(~_~;) |
当時の文章を振り返ると……どうしようもなく稚拙です。 いまだってそう変わるわけではないんですけれどね。 ただこの頃は何と言っても何か文章が書きたくてしょうがなかった頃です。 だから続けざまに文章が浮かんでました。 それがいい物語だとか、文章的に好感が持てるものかどうかは別にして、ただ書いてました。 それに夜11時ぐらいになると自分だけの静かな時間が取れていましたから。 今はそうもいかなくて、それで書けなくなってしまってますね。 どうやら静かな環境、誰にも邪魔されない環境じゃないと落ち着いて物語の創作に没頭できないようです。 あぁ、そういった時間が欲しい! |